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2017.11.01更新
 

「古紙」が高騰の一途。こんなところにも、中国の“爆買い”の余波が。
 

古新聞・古雑誌や使用済み段ボールを回収し、再び段ボールやトイレットペーパーなどに再生するのが、古紙リサイクルです。日本は、古紙回収率(81.3%)も利用率(64.2%)も世界トップ水準で“リサイクル優等生”です(「古紙再生促進センター」)。特に、段ボールにするための原紙の9割超には、使用済み段ボールを回収した古紙が使われます。2017年度の国内生産量が2年連続で過去最高を更新する勢い(「全国段ボール工業組合連合会」)の段ボール業界にとって、古紙価格が大きく影響を及ぼすことは言うまでもありません。

ところがいま、古紙価格が“歴史的な”高騰に見舞われているのです。昨年後半から急上昇し、今年6月時点の段ボール用古紙価格は1年前の1.6倍ほどに跳ね上がりました。“古紙バブル”の震源地は、世界最大の段ボール消費国である中国。ネット通販の拡大でもたらされた段ボール箱需要急増による中国の“爆買い”です。

中国の古紙回収率は、やっと40%強。とても生産増には追い付かず、結果、日本からの輸入に頼らざるを得ないというのが実状です。さらに、これまで最大の中国への古紙輸出国だった米国が、自国での消費が増えたこともあって輸出力が鈍り、日本の古紙への引き合いが強まったことも古紙価格上昇に拍車をかける結果に。これに伴い、中国への段ボール原紙の輸出が加速し、1〜6月の中国への輸出量は約4万トンに達しました(前年同期が約4000トン)。

それにつれて輸出価格が、月1トン当たり25ドルも上昇しましたが、手放しで歓迎するわけにはいきません。輸出価格の高騰は、国内の古紙価格にも波及。当然、原紙メーカーにとって、古紙の値上がりは収益の圧迫要因となって生産コストを押し上げ、大手各社は軒並み原紙や製品(段ボール)の値上げに踏み切らざるを得ない状況に。

国内の古紙回収量は、2007年をピークに3年連続で減少しています。また、古紙の輸出価格が高騰する一方、全体で見ると輸出量自体は4年連続で減り続けています(経産省)。かつて、リーマンショック後にも、わずか1年足らずで蘇ったといわれる古紙市場。需要増の環境下とはいえ、このところの古紙の高値基調の下、国内市場と輸出のバランスをとりながらの収益確保の道は険しく、原紙メーカーの模索は続きそうです。


※参考:
公益財団法人 古紙再生促進センター      http://www.prpc.or.jp/
全国段ボール工業組合連合会          http://zendanren.or.jp/
経済産業省                  http://www.meti.go.jp/
関東製紙原料直納商工組合           http://www.kantoushoso.com/
日経産業新聞(2017年6月28日付/同7月25日付)



はき古しの美学。“物語”をはくという、「ジーンズ」の新しい波。
 

数十万円もするヴィンテージものがブームになるかと思えば、1本990円のジーンズが話題となったり……時代に合わせて“歴史”をつくってきたジーンズ市場も、近年、頭打ちが続いており、ひところは一世を風靡したジーンズ専門店や専業メーカーなども苦境に立たされています。

しかし、そんな“ジーンズ冬の時代”にもめげず、新たな可能性をはらんだムーヴメントが起こっています。
世界最高レベルのデニム生地生産地である、広島県東部の備後(びんご)地方、尾道。その町の魅力をジーンズに込めて、日本はもとより世界に発信したいと、2013年に「尾道デニムプロジェクト」(運営「ディスカバーリンクせとうち」)が発足しました。プロジェクトの第一弾として始まったのが、地元、尾道で働いている様々な職業の人たち270人に、まっさらなデニムを1年間はき込んでもらい、一点ものの“リアルUSEDデニム”を作ろうという壮大な企画です。最大のポイントは、人為的な加工を一切施さないという点。

まず、参加者各人にジーンズを2本ずつ渡し(無料)、仕事中、私生活問わず着用してもらいます。その職種は、市長を筆頭に、住職、漁師、大工、農家、左官、保育士、カフェ店員、ラーメン屋、など多彩。
次に、1週間に一度、洗濯するために(専門の洗い職人が担当)全員から回収します。最初に2本配るのは、洗濯時のスペア用です。

この、“はく→回収→洗う→はく”を週ごとに1年間繰り返すことで、後付けの加工では作り出せない自然で本物のユーストジーンズが出来上がります。その数、540本。1本1本、チェックした上で値決めされ、専門のショップで販売されます。値札には、はいていた人の職業も明記。例えば、漁師が1年間はいたジーンズには、4万2000円の値が付けられました。太陽光や潮風をたっぷり浴び、ロープが擦れて生まれた色褪せ、長靴の痕によるひざ下の白い色落ち……最初に配った新品の定価が2万2000円ですから、約2倍の価値が付いたことになります。

そこには、1本たりとも同じものは存在しない仕事人たちの“物語”が刻まれ、シワやキズまでが味となって語りはじめます。ただの古着ではない、究極の一点ものとしての魅力が広まり、徐々に海外からの注目度も高まっています。

“クール・ジャパン”はアニメだけではありません。世界へ向け、新しい価値を付加することでまだまだ可能性を広げる、ジャパンオリジナルジーンズの今後にも注目です。


※参考:
尾道デニムプロジェクト         http://www.onomichidenim.com/
日経MJ(2017年4月5日付)
日経産業新聞(2017年4月17日付)



下積みはムダ?勘よりマニュアル重視の、「インスタント職人」増殖中。
 

長年の修業があってこそ一人前という職人の世界に、いま“革命”が起きつつあります。超短期間で育て上げる、「インスタント職人」のシステムが注目を集めています。

“飯炊き3年、握り8年”といわれ、地道な下積み修業が必須とされる寿司職人。この通説をいともあっさりと覆したのが、2014年、大阪で開校した「飲食人大学」(運営[RETOWN HUMAN])です。なんと、3カ月という短期集中カリキュラムで一人前の寿司職人を生み出すというもの。特徴は、現場実践主義で、徹底した実技反復練習。魚をさばく時の包丁の角度や時間経過による味の変化などを、“感覚”ではなく、具体的な数値で論理的に教え込みます。“技術を盗む”ことに費やす労力と時間は無駄であるという考え方が基本。週6日、9時から16時までのコースで60万円。現在は、東京と名古屋でも開設し、卒業生は約300人。そのほとんどが、包丁すらまともに握ったことがなかった人たちです。大阪・梅田には、卒業生のみで切り盛りする寿司店があり、開店からわずか11カ月で「ミシュランガイド」に掲載されるという、堂々の実績を証明しています。

1週間でラーメン職人に育て上げて開業まで導くのは、香川県の「大和(やまと)ラーメン学校」(運営[大和製作所])。曖昧な“勘”を一切排除し、まるで理科実験のように0.1g単位で数値化されたデジタルクッキングで、誰でも、同じ味を作れるように教えるのがモットーです。他に、東京、シンガポールでも開校。費用は約42万円。

5日間に、ベーカリー開業までの研修をギュッとパッケージングしたのが、岡山県の「リエゾンプロジェクト」(運営[おかやま工房])。温度・時間・大きさなどを数値化して、製造工程から、感覚的な職人技をすべて排除。レシピを独自開発で簡素化し、国産小麦をブレンドした1種類だけの小麦粉を使用するので、難しい調合等は不要。現在、東京と大阪にも研修センターを設けています。費用は10万円、卒業生は約500人。独立開業した店舗数は約130店を数えます。

インスタント職人の増殖傾向は飲食業界にとどまりません。襖・障子などを扱う「表具業」や「左官業」など、若い人材獲得への苦肉の策としてこの手法を取り入れているところが少なくありません。
「技は教わるのではなく見ておぼえろというのは、結局、自分が苦労して得たものを簡単に教えてなるものかというだけ。それを惜しまなければ、短期習得は可能」という、ある表具師の言葉が印象的です。

長年の下積み修業が醸し出す奥深さは認めつつも、インスタント職人は“いま”という時代の要請から生まれたことは確かなようで、双方の真価が問われる勝敗の行方は、数年先まで持ち越しとなりそうです。


※参考:
飲食人大学           http://insyokujin.ac/
大和ラーメン学校        http://www.yamatomfg.com/
リエゾンプロジェクト      http://www.liaisonproject.jp/
日経MJ(2017年4月17日付)


 
 
 
 
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