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2019.06.03更新
 

原酒不足を商機に。ウイスキーの新顔、続々と台頭。
 

 昨年、[サントリー]の「白州12年」「響17年」が。そして今年に入って、[キリン]の「富士山麓 樽熟原酒50度」や[サントリー]の「白角」「知多」など、高級国産ウイスキーの販売休止のニュースが駆け巡りました。
消費量が落ち込み続けていたウイスキーの国内市場は、2010年頃から徐々に回復。2017年には、ここ数十年で最低だった2008年の2倍以上まで持ち直しました。さらに、海外で“ジャパニーズ・ウイスキー”の評価が高まり、輸出が急増。国内の需要をまかなうことすら難しくなってきたことに加え、[サントリー]角瓶の販売戦略が沸き起こしたハイボールブームによる驚異的需要増。この2つが重なって、メーカーも想定外の原酒不足という事態を招いてしまったのです。

ウイスキーの原酒は、熟成に時間がかかるため、人気に火がついたからといって、すぐには増産できるものではありません。何年も先の需要を見込んで計画生産されるため、今般のように、数年前の低迷期の需要予測に基づいて生産された原酒の量では、まかないきれないのは無理からぬこと。メーカーは、限りある原酒をどの商品に割り当て、どの商品を販売休止させるかという、苦渋の決断を迫られたのです。

そんな、大手の“非常事態”のすき間を縫うように、二つの大きな波が押し寄せています。その一つが、最近、存在感を増している「地ウイスキー(クラフトウイスキー)」。地方の小規模な蒸留所でつくられる少量生産のウイスキーです。
埼玉の秩父蒸留所、富山の三郎丸蒸留所、福島の安積蒸留所といった古参をはじめ、新興勢力も続々と台頭。[サントリー]と[ニッカ]の2社だけで9割近いシェアを占めている国内のウイスキー市場の中で、シェアの数値だけでは計れない個性を発揮して新しいトレンドとなりつつあります。

もう一つのウエーブは、“ウイスキーの産地=冷涼な地域”という常識を覆す、暑い国からの攻勢です。
台湾産シングルモルト「カバラン」(税別4500円〜)は、スコットランドの3〜4倍の早さで熟成するという“早熟ウイスキー”。世界的コンペティションで最優秀シングルモルトを2年連続で受賞するほどの実力の持ち主です。
[国分グループ]が輸入しているのは、知る人ぞ知るウイスキー大国、インド産のシングルモルト「ポール・ジョン」(税別6000円〜)。こちらも、国産ウイスキー不足を補って余りあるほどの実力派。世界24カ国で発売されており、2017年に日本初上陸。

国内大手メーカーでは現在、原酒不足改善に向け、貯蔵庫の増設や蒸留所の生産能力増強などへ巨額を投じて対策を急いでいますが、このまま順調に市場拡大し続けることを前提とした大型投資。はたして、原酒が樽の中で眠っている数年の間に、市場が様変わりしていないことを祈るばかりです。


※参考:
ウイスキー文化研究所         https://scotchclub.org/
サントリーホールディングス      https://www.suntory.co.jp/
キリン                   https://www.kirin.co.jp/
ニッカウイスキー            https://www.nikka.com/
カバラン                 https://www.kavalan.jp/
国分グループ              https://www.kokubu.co.jp/
日本経済新聞電子版(2019年1月21日付/同2月7日付/同3月28日付)
朝日新聞(2019年1月8日付)
日経MJ(2019年4月8日付)





大容量で超高速。世の中変わる、「5G」が変える。
 

スマホなどで利用される「モバイル(無線移動体)通信技術」。その進化の軌跡は、アナログ方式の1G(Generation)=第1世代(1979年〜)、デジタル方式の2G=第2世代(1993年〜)、初の国際基準となった3G=第3世代(2001年〜)、高速化が進んだ現在主流の4G=第4世代(2012年〜)、そして次なる新技術としていま巷で話題となっているのが、「5G」(ファイブジー、まれにゴジー)と呼ばれる「第5世代モバイル通信システム」です。

この新技術は、私たちの生活やビジネスにどんな恩恵をもたらし、世の中をどのように変えていくのでしょう----それは、5Gに備わっている3つの大きな特徴に関わっています。

1.超高速・大容量
通信速度が現行(4G)の数十倍〜100倍と劇的に向上すると共に、動画のクオリティも格段にアップ。VR(仮想現実)を含む4K・8Kといったデータ容量の大きな高解像度の動画高速配信が可能となります。この、大量のデータを超高速で一気に送受信できるという特徴が、5G技術の“肝”となります。

2.超低遅延
データ通信時のタイムラグが1000分の1秒以下を実現。体感的にはほとんど感じず、遠距離通信でもズレが生じません。自動運転や遠隔医療、遠隔介護など、リアルタイムでの操作・制御が要求される領域での活用が期待されます。

3.多数同時接続
一つの通信基地局から同時に接続できる端末機器の数を大幅に増やすことが可能に。その数、1平方キロメートル当たり100万台以上といわれています。現行の100倍以上です。IoT化が進み、生活におけるあらゆるモノがネットに接続されるようになると、4Gのままではとても通信負荷に耐えられなくなります。5Gの導入が、IoTの普及には必要不可欠なインフラであるといわれる所以です。

5Gは、米国や韓国などですでに実用化がスタートしています。日本でも2020年の本格始動を前に、携帯大手や家電・自動車メーカーなどが中心となって数々の実証実験が重ねられています。
自動車、航空、医療、建設、住宅、教育、製造業、観光、エンタメ……画期的な5Gの技術は、これまでの4度の世代交代とは比べ物にならないほど、あらゆる産業を一変させてしまうほどの力を秘めているといわれています。テレビが白黒からカラーになったときの感動……5Gへの移行は、それよりもっと大きなものになりそうです。


※参考:
総務省           http://www.soumu.go.jp/
朝日新聞デジタル(1019年1月7日付/同2月28日付/同4月10日付)
朝日新聞(2019年1月9日付)
日本経済新聞(2019年2月14日付)



雑貨や家具を買うように。もっと気軽に、「アート」と暮らす。
 

美術館などで絵画を鑑賞するといった“知的体験”は日本人の好むところですが、一方で、アート作品を日々の暮らしに取り入れて楽しむということに関しては、残念ながら得意とは言い難いようです。世界のアート市場は約7兆円の巨大マーケットで(2018年/文化庁)、トップスリーの米国、中国、英国だけで8割以上を占めています。GDP世界ランク3位で、経済レベルではこれらの国と遜色ないにもかかわらず、日本はわずか3%程度にとどまっているという現実。アートを買って生活に取り入れる、という面では大きく水をあけられているようです。

しかし最近は日本でも、アートをインテリアの一つとして自宅に飾る人が増えてきています。アートを気軽に買うことができる“場”が増えてきたことが要因の一つといえそうです。
一般的なのが「ギャラリー(画廊)」や「百貨店」の絵画コーナーでの購入です。また、「アートフェア」というイベントでの購入も注目されています。アートの見本市のようなもので、お祭り感覚で気軽に参加できます。日本最大級の「アートフェア東京」では昨年、入場者数、売り上げ共に過去最高を記録しました。たくさんの作品を一気に見ることができ、意外な掘り出し物に巡り合うことも。
最近増えているのが、「ネット通販」で購入する方法。作家や価格、号数などで検索をかけることで、瞬時に作品を見比べることができる点がメリットです。専門のサイトも年々増加傾向です。

アート購入の目的としては、“投資”と“作家支援”という側面も見られます。
投資といっても、無名の若手アーティストの作品を買って、将来、有名になって作品の値が上がったらラッキー!という程度のお楽しみ感覚の“身の丈投資”です。
支援ということでは、[ピクスタ]が昨年、ネット上でアーティストの創作活動を支援する「mecelo(メセロ)」というプラットフォームを開設。月額100円から好きな作家を支援でき、お礼は作家のポストカードなど。
ほかにも、画家が買い手と直接交渉しながら落札する新しい形のオークションが生まれたり、京都の「スターバックス」では、美大生らによる現代アートの作品、80点以上を店内に展示。希望すれば買うこともできるといったように、アートを身近に感じてもらおうとする動きがあちこちで見られるようになりました。

“見る”から“買う”、そして“共に暮らす”へ。アートは、着実に私たちの生活に近づいていることを実感させられます。


※参考:
文化庁                   http://www.bunka.go.jp/
ピクスタ                   https://pixta.jp/
スターバックスコーヒージャパン    http://www.starbucks.co.jp/
日経MJ(2019年1月7日付/同3月29日付)



 
 
 
 
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